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世の中に存在しない仕事をどうやって作り出すのか【本の紹介001】『「ない仕事」の作り方』みうらじゅん

※ネタバレ注意

「ない仕事」の作り方

「ない仕事」の作り方

 

 
【概要】
みうらじゅん氏によるプロデュース論。
マイブーム、ゆるキャラ、見仏記、映画『アイデン&ティティ』、『色即ぜねれーしょん』の原作、など数々の活動で知られ、イラストレーター、漫画家、作曲家、DJ、エッセイスト、小説家、ミュージシャン、評論家、ラジオDJ、編集長、ライター、解説者、、、とマルチな才能で伝説的なサブカルチャーコンテンツを生み出してきたみうらじゅん氏の仕事に通底する仕事術。

みうらじゅん氏の仕事の大半は今まで世の中に存在しなかったものである。
氏は常に己の仕事を生み出すためにジャンル自体を作り上げることで唯一無二のポジションを築きあげてきた。そもそも世の中にない仕事を生み出すにはどうしたらよいのか。ネーミングから広報、イベント、営業、ブームの起こし方から接待の方法まで、みうら氏が「一人電通」と呼ぶセルフプロデュースの方法が具体的なノウハウとともに綴られる。

【こんな人にオススメ】
起業を考えている人/プロデューサーになりたい人/クリエイターの人/企画の仕事をしている人(したい人)/広報の仕事をしている人(したい人)/サブカルチャーが好きな人 など

【感想】

面白かったです。

一見、バラバラで支離滅裂(?)のように見える、みうらじゅん氏の仕事にも、その底には極めて戦略的かつ地道な努力の積み重ねが横たわっていることがよくわかります。

本書は『ゆるキャラ』を例に、どのように、一人の人間の(風変わりな?)感性が2兆円産業と呼ばれるほどのムーブメントに変化していくのかが具体的に書かれていて、それだけでも、ひとつの起業論やマーケティング論(というよりマーケティングノウハウ)として読めるのですが、一番、感銘を受けたのが「自分洗脳と収集」というくだり。


私だって「今、ゆるキャラが面白いよ」と一言言ってそれがブームになるのであれば、それに越したことはありません。しかし当然ですが、その程度では人は興味を持ってくれません。

人に興味を持ってもらうためには、まず自分が、「絶対にゆるキャラのブームがくる」 と強く思い込まなければなりません。「これだけ面白いものが、流行らないわけがない」と、自分を洗脳していくのです。

他人を洗脳するのも難しいですが、自分を洗脳するのはもっと難しいものです。なぜなら相手は手の内をいちばんよく知っている「自分」だからです。

そこで必要になってくるのが、無駄な努力です。興味の対象となるものを、大量に集め始めます。好きだから買うのではなく、買って圧倒的な量が集まってきたから好きになるという戦略です。

 
あの、サブカル界の重鎮である、みうらじゅん氏ですら、一言言っただけでブームが起きることはないと断言するところからブームを起こすということがどれほど難しいことかよくわかりますが、さらに、あの、みうら氏ですら、己を戦略的に騙すという方法論を取っていたのかというところがまさに目からウロコが出る点でした。

傍から見ると、みうら氏が己の感性を信じ、自分が好きなもの・面白いと思ったものをとことん突き詰め(=マイブームを作り出す)その価値を世の中に発信し続けているというところまでは想像がつきますが、そんな、みうらじゅん氏でも、時に「ほんとうにゆるキャラブームがくるんだろうか」という疑念に負けそうになる。

そんなときに、大量にモノを集めることで逆に自分を洗脳する。

この発想には驚きました。まさに、自分ハックです。

さらに、みうら氏は、自分の感性が世の中に受け入れられないかもしれないという不安に対し、「そこがいいんじゃない!」という呪文を唱えることで己を鼓舞すると書いています。

これは、新しいことをしようとするすべての人を勇気づけるメッセージに思えます。

人はよくわからないものに対して、すぐに「つまらない」と反応しがちです。しかしそれでは「普通」じゃないですか。「ない仕事」を世に送り出すには、「普通」では成立しません。「つまらないかもな」と思ったら「つま……」くらいのタイミングで、「そこがいいんじゃない!」と全肯定し、「普通」な自分を否定していく。そうすることで、より面白く感じられ、自信が湧いてくるのです。

 
この本が今日的な意味を持っていると感じるのは、これからは、みうら氏のように「ない仕事」を作り出していくことがますます求められる世の中になると思うからです。成熟社会においては、すでに存在するものはものすごい勢いでコモディティ化していきます。マーケティング用語ではいかにブルーオーシャンを開拓するかということになるのでしょうが、本書がとてもよいのは、なんだかんだ一番大事なのは「愛をもって広めようとする個人の力だよ」と言っているように聞こえるからです。

いまは、インターネットがあるので、どんな仕事でも自分で名乗り続ければ仕事として成立するインフラが整っています。企業が発信するありきたりなメッセージより、愛をもった個人が発信する偏執的なメッセージのほうが世の中に広まりやすい時代も来ていると思います。

ただ、新しいことはなかなか世の中に広まっていきません。
まず、そもそもそれが一体、なんなのかを認知してもらうまでが大変だと思います。

そんな中、本書は、個人が世界と戦っていくための大きな方法論を提示しているのではないでしょうか。

みうら氏のように、「愛」をもって、新たな仕事を作り出していく人たちがどんどん世の中に出て行く人が増えれば、世の中もどんどん面白くなっていくように思います。

個人の時代を生き抜くためにオススメの仕事術の本です。